人工知能の不気味の谷現象ってなんだと思いますか?
本当に不気味なんですよ、怖い怖い。
不気味の谷とは?
今回は人工知能分野でよく使われる「不気味の谷」について説明します。
不気味の谷というのがわからない方は、これはどこにある谷なの?と思われるかもしれませんが、これは実際にどこかの国に存在する変な形をした谷というわけではありません。
「不気味の谷」とは人工知能分野でよく使われる概念を説明した言葉です。
人工知能とは?
まず人工知能について簡単に説明します。
人工知能とは英語圏でいうArtificial Intelligence (AI)の和訳です。
つまり、人間や動物のように自然界に存在する知能ではなく、人間が人工的に作り上げた知能という意味です。
例えば、身近な例で説明するとルンバなどのお掃除ロボットは人間が掃除の仕方や部屋の構造を教えているわけではありません。
それでも自動的に部屋の中を掃除してくれます。これは自然界に存在する知性ではありません。
そのため、こういったお掃除ロボットは人工知能の代表例として挙げられます。
他にも、自動車の自動運転なんかも最近めざましく進歩した人工知能の一つです。
道路状況や周辺状況をカメラや電磁波、音波などを用いて解析することであたかも車に知能があるかのように動作し、人間の代わりに自動で運転してくれます。
このように最近は、機械学習という技術のおかげで人工知能の進歩が目覚ましく、人工知能は研究分野だけでなくビジネスでも非常に注目されています。
私は地球科学の研究者ですが、人工知能の目覚ましい進歩は私の研究分野にまで押し寄せており、私も人工知能を地球科学分野に適用した研究論文を執筆したことがあります。
人工知能はどんどん人間に近づいている
上で説明したように、お掃除を自動でやってくれるロボットや、自動で運転してくれるロボットが出現するなど、人工知能はどんどん人間に近づきつつあります。
では、このままロボットがどんどん進化すると、人工知能のような知性を持ち、さらに人間の見た目に近づいていく、まるで漫画やアニメのようなことになるのでしょうか。
不気味の谷現象の具体例
もしもロボットが人間の見た目に近づいていくとどのような事が起こるのでしょう。
人間とロボットの見分けがつかなくなるのでしょうか?
漫画やアニメでは見分けがつかなくなった世界が描かれる事が多いですよね。
しかしながら、ここでとてもおもしろい現象が起こっています。
それは、ロボットが人間の見た目に極端に近づいていくにつれて、人間はそのロボットに違和感・恐怖感・嫌悪感などの負の感情を感じるという現象があるのです。
通常ロボットが人間の見た目に近づいていくと、友達のような感情を持つのですが、あまりにも近づきすぎると突然薄気味悪いという感情が強く現れます。
これを不気味の谷現象といいます。
出典:日本ロボット学会 https://robogaku.jp/history/integration/I-1970-1.html
身近な例でいうと、ASIMO(アシモ)のような人の動きを真似するロボットは可愛らしく感じられますが、アンドロイドの「地平ジュンこ」のような動くリアルなマネキンのようなロボットは、少し不気味に感じられるのではないでしょうか。
この本物の人間のように動いているが「なんだか薄気味悪い」という感情が不気味の谷における負の感情です。
↓具体例「アンドロイドの地平ジュンこ」さんの動いているところをご覧ください。↓
不気味の谷を乗り越えることはできる?
では、この不気味の谷を乗り越えることが不可能なのでしょうか?
理論的にはさらにロボットを進化させ、人と見分けがつかないほど似せることができれば、人間はロボットに親近感を持つということになっています。
しかし、現実で起きているのは、人間の動きをリアルに再現しようと思えば思うほど、不気味の谷現象に陥っている状況です。
では、どのようにすればこの問題を解決できるでしょうか。私が考えるに鍵は2つあります。
美男または美女を作ろうとしない
まず一つ目は、美男または美女を作ろうとしないこと。
顔を作る際に、美しさにこだわりすぎてしまうががために、不自然さが生まれ、それが不気味さに繋がると考えられています。
本物の人間の顔は左右非対称です。つまり完璧ではないからこそ、人間らしいのです。
完璧を目指そうとしないことでより本物の人間らしさに近づくとは、なんだか意外で、我々人間が普段忘れている大事なことを思い出させてくれているようですね。
忠実度を下げる
二つ目は、忠実度を下げることです。
人間に似ているが、もう一歩という感覚が違和感を引き起こし、不気味の谷に陥る原因となっているので、生身のあえて人間に近づけず、キャラクターやアバターとして完成させるアプローチです。
一見、人間に近づけることを諦めているように聞こえますが、先ほども述べたように完璧でないことで、より親近感を覚えることに繋がることが多いとされています。
ちなみにこれらの方法は実際に使われ、一定の成果をあげています。
人工知能は怖くない!
現代では、プロジェクトマッピングやCG等に代表される映像技術が急速に発達しています。
そのため、近い内に不気味の谷を乗り越えられる日が近いかもしれません。
人工物であるロボットを作ることによって人間らしさとは何か、ということを考えさせられるのはとても興味深いですね。
⇒人工知能(AI)がプログラムコードを自動生成する「OpenAI Codex」とは?
30代大学教員
アメリカ在住
京都大学大学院修了
博士(工学)