日本に住んで、地震を体験したことのない人は数少ないと思います。
日本は世界の陸地の1%程度の大きさですが、世界で発生する地震の10%が日本で起こっています。それほど日本は地震が多い国なのです。
また、日本では東日本大震災を上回る地震がいつ起こってもおかしくないと言われています。毎日、不安を感じながら過ごす必要はありませんが、怖いからと何も考えないのは良い選択とは言えません。
なぜなら、地震を正しく知り備えをすることで、被害の大きさを減らすことができるからです。今回の話は、ぜひご家族で読んでいただきたいと思います。
関連ページ地球の内核が逆回転!?これからどうなるの?工学博士がわかりやすく解説
地震が起こる理由
地球の表面には、プレートと呼ばれる厚さ100km前後の固い岩石の層があります。
地球は十数枚のプレートでおおわれていますが、それぞれ一年間に数センチ動きます。
そして、隣り合ったプレートが押し合うことで大きな力が発生し、地震となるのです。
日本のまわりは4枚のプレートが入り組んでいます。そのため、多くの地震が起こるのです。
地震には「海溝型地震」と「活断層型地震」があります。海にあるプレートは陸のプレートの下にゆっくり沈み込んでいきます。
その時に陸のプレートの先端部にひずみが生まれます。
ひずみが耐え切れなくなり、はね返った衝撃で起きる地震を海溝型地震と言います。
海溝型地震は大地震になりやすく、津波を起こすこともあります。東日本大震災や、今年トルコで起こった大地震が海溝型地震にあたります。
地面を掘っていくと固い岩の層にぶつかりますが、そこにはたくさんの割れ目があります。割れ目に大きな力が加えられるとずれが生じ、その衝撃が地震となります。
これまで地震が起こったことがあり、これからも地震が発生する可能性のある割れ目を活断層といいます。
プレートの動きは岩の層にひずみを生みますが、耐えられなくなった強度の弱い活断層は急激にずれ動きます。これが活断層型地震です。阪神・淡路大震災や熊本地震がこの地震にあたります。
マグニチュードと震度
地震のニュースを聞くと、「マグニチュード」と「震度」いうことばが出てきます。
マグニチュードというのは地震そのもの大きさのことを言います。阪神・淡路大震災はマグニチュード7.3、東日本大震災は9.0でした。
マグニチュードが1大きくなると、地震のエネルギーは約32倍になります。震度はそれぞれの場所におけるゆれの強さをあらわします。一般的に震源から遠くなるほど震度は小さくなります。
地震の発生は予知できる?
日本では地震の被害を少なくするために、さまざまな研究が行われています。
地震の発生を予知する。地震が起こったことをいち早く伝える。津波の大きさや到達時間を予測する。建物の耐震化など地震が起こった時の被害を少なくする研究などがあります。
中でも、地震が予知できれば、発生前に避難することができます。地震予知の研究はどの程度進んでいるのでしょうか。
地震予知には、「いつ」「どこで」「どの程度」の地震が起こるか明らかにする必要があります。「どこで」と「どの程度」は、ある程度わかるようになりました。
しかし、日本地震学会は「時間を指定した短期的な予知は、現在の技術では困難」だと公表しています。
プレートや活断層の動きの調査も行われていますが、データが少ない上に、地震はそもそも異常な自然現象であり予測が困難なのです。
そのため、地質や歴史的な文献を調べることで、過去にいつ地震が起こったかを知り、プレートのひずみの限界時期から地震の起こる時期を推測するしかできないのです。
*日本地震学会 https://www.zisin.jp/
南海トラフ大地震はいつ起こる?
南海トラフという言葉を聞いたことがあると思います。静岡県から九州の海底にあるプレートの境界のことを言いますが、南海トラフでは100年から150年ほどの間隔で、マグニチュード8クラスの大地震が発生してきました。
地震調査研究推進本部は、「南海トラフでマグニチュード8から9の巨大地震が、今後30年以内に『70%から80%』の確率で発生する」と予測しています。
京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏は、このような漠然とした予測では切迫感が伝わらないとして、「2035年±5年、つまり2030年代に南海トラフ大地震が起こる」といっています。最悪の場合、30万が死亡するとしています。
また、南海トラフ大地震以外に、首都圏直下地震、富士山噴火も、近い将来に起こるといわれています。危険なのは太平洋側だけではありません。
海溝型地震に誘発されて、日本中、どこでも活断層型地震が発生する可能性があります。つまり、地震予知の正確性を求めるよりも、いつどこで大地震が起こってもおかしくないと思い、地震が起きた時の準備をすることが大切なのです。
*京都大学名誉教授 鎌田浩毅先生
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/~kamata/
日頃の準備が生んだ「奇跡」
一方、素早い避難や防災対策によって、地震の被害を軽減できることもわかっています。
多くの人が早めに避難した場合、津波の犠牲者は最大でおよそ80%少なくなり、建物の耐震化率を引き上げれば、建物の倒壊は40%程度減らせると推計されています。
「釜石の奇跡」という言葉はご存じでしょうか?東日本大震災の際、岩手県釜石市内の生徒の多くは無事避難できました。
なかでも、釜石東中学校と鵜住居小学校は海から500m足らずに位置しているにもかかわらず、約570名の生徒全員が生き延びることができました。
地震発生ともに中学生たちは高台に向かって走り出し、その途中で合流した小学生の手を引き、より高い場所へと走りました。
時速数十キロで襲った津波は、生徒たちが避難した直後に町や学校を飲み込みました。
三陸地方には「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。
「津波が来たら、家族がてんでバラバラでもとにかく高台に逃げろ」という意味です。
「釜石の奇跡」は、日頃から防災訓練を行い、言い伝え通りに行動した結果であり、偶然の奇跡ではなかったのです。
家族で「奇跡」を起こそう!
学校の帰り道に地震が起こったら?一人で留守番しているときだったら?家族一緒でなかったら?大地震が起こった時に、正しい判断はできません。
日々の生活の中で、大地震が起こった際のシナリオを考えて、家族で共有しておくことが大切です。
ブロック塀に近よらない。テーブルの下で頭を隠す。地震後はガラスで足の裏を切らないようにスリッパをはく。171災害伝言ダイヤルの使い方を知っておく。これまでの大地震から学んだことがたくさんあります。
一例として、地震本部のキッズ向けサイト「地震キッズ探検隊」をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
https://www.kids.jishin.go.jp/index.html
日々、地震のことを考えることはできません。年に一回でも良いので日を決めて、備えの再点検を行ってはいかがでしょう。
大地震が起こった時、日頃の準備で多くの「奇跡」が起こることを願っています。
【参考文献】
(1)鎌田浩毅「揺れる大地を賢く生きる・京大地球科学教授の最終講義」 (2022年,KADOKAWA)
(2)「親子で読もう!ドラえもんの地震はなぜ起こる・どう身を守る」(2011年,監修:国崎信江)
あっくんパパ
30代
2児の父
京都大学院修了
博士(工学)