Dマル合(読み方は、でぃーまるごう)やMマル合(えむまるごう)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
おそらく世の中の99.99%くらいの人は聞いたことがないキーワードではないでしょうか?
このページでは大学教員の資格について工学博士が解説します。
Dマル合とは?
大学教員の資格
Dマル合とは日本の大学教員資格の1つです。
まず日本の大学の職位について簡単に説明します。日本の大学では、教授、准教授、助教(まれに講師や助手)が大学の職員として研究室を運営しています。
このなかでは職階としては、教授>准教授>講師>助教となっています。
つまり、平たくいうと教授がこのなかでは一番偉いポジションにあるということです。
そのため、大学の運営において教授しかできないことというのが色々と存在します。
Dマル合の資格を持っていないと博士論文の審査ができない
例えば、博士課程の学生が博士号をとるためには、博士論文を公聴会という場で発表し審査を受ける必要があります。
このとき、ほぼ確実に複数名の教授が審査を行い、准教授が審査を行うことはめったにありません。
この理由は、教授が審査をしないといけないというルールがあるわけではありません。実はDマル合という資格を持っていないと博士論文の審査をすることができないからです。
あまり知られていないことなのですが、日本の大学の教員資格には6種類あります。
- Dマル合
- D合
- D可
- Mマル合
- M合
- M可
博士の審査をするためにはDマル合が必要となり、修士の審査をするためにはMマル合が必要となります。
ここでのDはDoctor(ドクター)=博士を意味し、MはMaster(マスター)=修士を意味します。
「マル合」というのは、その学生の学位論文の指導ができることを意味し、「合」というのはその学生の学位論文指導の補助ができること。
「可」というのはその学生の授業を担当することができるということを意味します。
例えば、M合というのは修士課程の学生の学位論文指導の補助ができることを意味し、D可というのは博士課程の学生の授業を担当することができる、ということを意味します。
このように単純に教授だから博士課程の審査ができるということではなく、学生の指導に関していうと、このような6種類の資格を持っていることが必要になってきます。
審査をするだけでなく、授業をするためにはそれぞれの資格が必要になるのです。
ちなみに、「今どきの大学」によると、「マル合(まるごう)」という呼称は正式書類では「合」の字を○で囲った文字を使うことに由来しているようです。
文部科学省の規定にも定められている
このDマル合のような6種類の資格は文部科学省の規定にもしっかりと定められており、教員がどの資格を持っているかは採用の際の重要な要素の一つとなっています。
募集要項によっては特定の資格を持っていないと採用できない、と明記しているところもあります。
給料に直接影響するわけでは有りませんが、この資格を持っていないと採用できないとなると教員側も取得できるよう努力するしかありません。
Dマル合をとるためには?
ではこのようなDマル合資格はどのようにして取得するのでしょうか。
資格試験はなく基準が曖昧
資格試験のようなものがあるのかなと思われた方もいるかもしれませんが、実は資格試験のようなものはありません。
実はこの資格を取得するための条件は非常に曖昧で、さらに言うと大学によっても異なります。
一般的にはDマル合の場合は、研究論文または著書が30から40本くらいあることが条件になっていることが多いです。
例えば電気通信大学の場合は、この論文の数が20本になり、その代わりに過去5年以内に出版している論文の数が重要視されることもあります。
大学によっても文系理系で必要とされる条件が違うこともあり、明確な基準はなく、自分が所属する大学、学部に確認しなければきちんとしたとこよはわからない、というのが実情です。
大学によってはこの基準というのは非常にハードルが高いこともあり、教授であってもDマル合を持っていないという人います。
この場合、教授であったとしても博士論文の審査に関わることができないことになります。
このように教授であっても不合格になってしまうことも多いため、教員間であってもDマル合について話し合うことはあまり多くありません。
このようにDマル合というのは、あまり大っぴらで話すようなことでもないため、研究業界や大学で学生として在籍していたとしてもDマル合について気にするというケースは殆どないと思います。
実際に私もDマル合について、学生の時は全く知りませんでした。この制度は学生ではなく、教員が知っておけば良いからかもしれません。
⇒博士号の英語表記はDr.とPh.D.どっちが正解?違いは何?
今後は制度変更されるかも?
では今後この資格はどうなるのでしょうか。あくまで私の一個人の意見ですが、Dマル合というのは今後、形骸化していくか、制度変更されるのではないかと推測しています。
そもそも、Dマル合というのは、現実的な大学の教育指導に即していないことが多いです。
例えば、助教はD合(つまり、博士課程学生指導の補助)を持っていないことが多いですが、現実的には学生の指導をしたり、サポートをしたりすることが多いです。
このように、大学の現場レベルで言うと既に形骸化しており、修士課程・博士課程学生の審査会においてのみ機能していると感じます。
そのため、今後は大学における改革などがあった際には少なくとも形を変えるか、より大学の現実にフィットした制度に変更されるのではないかと思います。
*文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ninka/06052615/002.htm
30代大学教員 あっ君パパ
京都大学大学院修了 博士(工学)