幼児が次々と言葉覚えたり、新しいことに興味を抱いたりする姿を見ていると、子供の才能には無限の可能性があると感じますよね。
幼児の間は伸び伸びと遊ばせてあげたいと感じる一方で、早期教育でさらに才能を伸ばすことができるのではと考えるママパパもいるのではないでしょうか?
では、就学前の早期教育は本当に効果があるのでしょうか。弊害・デメリットはないのでしょうか。
今回の記事では未就学児に対する早期教育の効果についてお話いたします。
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もくじ
早期英語教育の効果とは?
ではまず読者の皆様が一番興味がありそうな英語教育についてお話したいと思います。
小学校で英語教育が開始されましたが、早くから英語の学習を行うことに効果はあるのでしょうか。
カナダで日本人家庭の子供の英語読解力を調査
一家で英語圏に移住した場合、親はいつまでも英語が上達しないのに、子どもは流暢な発音になるという話はよく聞きます。それでは幼いときから英語圏で暮らせば英語力が高くなるのでしょうか。
カナダ・トロント大学のジム・カミンズ教授が、トロント市に移住した日本人家庭の子ども80人を10年間追跡調査について見てみましょう。
この調査によると、現地の生活で困らない英会話力は1年半ほどで獲得できるものの、学校の授業で必要な英語読解力が現地並みになるには8年半かかったことがわかっています。
中でも3~6歳に移住した子どもは、7~9歳で移住した子どもよりも時間を要したという結果がでました。
これは、幼児から英語漬けの環境に身をおくことは英会話力習得には効果があるものの、母国語での読み書きを習得する前に二つの言語にさらされたため、英語読解力の発達が遅れたものと考えられています。*1
日本で英語学習の開始年齢とテストの得点を調査
日本においても岐阜市立女子短期大学,小島ますみ准教授によって、350人の小学生を対象に調査が行われています。
この調査では、英語学習開始年令、総学習時間、英語リスニングテストの得点、英単語を聞いた時の脳波を調べました。
この結果、学習時間が同じであれば学習開始年齢の大きい子どもの方が、小さい子どもより得点が高いことがわかりました。
*英語の学習開始年齢とリスニングテスト得点の関係。縦軸がテストの得点、横軸が学習開始年齢↓
出典:岐阜市立女子短期大学https://gifu-cwc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=34&item_no=1&page_id=13&block_id=21
研究結果:英語の早期学習は非効率!
これらの結果は外国語の学習は早ければ早いほど良いという俗説が誤りであり、実際は英語の早期学習は非効率である可能性を示唆しています。
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早期教育の指導法やしつけスタイル
次に、一般的な早期教育の指導法について考えてみましょう。
子どもの自発的な遊びを大事にする指導
IPU・環太平洋大学、内田伸子教授は、早期教育の指導法が重要であることを指摘しています。
3歳、4歳、5歳児の保護者、子どもの通っている幼稚園、保育所へアンケート調査を行い、幼児の読み書き能力や語彙力の差を比較した結果、
小学校の教育を先取りして学習している幼稚園や保育園に比べて、子どもの自発的な遊びを大事にしている幼稚園、保育園の方が得点が高いことがわかりました。
幼児は大人からのトップダウンで教えられて覚えるのではなく、自発的な遊びを通して読み書き能力や語彙を獲得していくのが重要であることが指摘されています。
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親子でのふれあいを重視する「しつけ」
出典:教育格差は幼児期からはじまるか?https://www.jstage.jst.go.jp/article/eds/100/0/100_108/_pdf/-char/ja
また、しつけのスタイルと語彙力との相関関係も明らかになっています。
調査に参加した親のしつけスタイルを2つに区分しました。
- 「共有型しつけ」子どもとのふれあいを重視し子どもと体験を享受・共有する
- 「強制型しつけ」大人中心のトップダウンのしつけや、力のしつけで子どもを従わせる等
すると、語彙得点の高い子どもは共有型しつけを受けており、語彙得点の低い子どもは強制型しつけを受けていることがわかりました。
「共有型しつけ」と「強制型しつけ」のパズル問題や絵本の読み聞かせにおける親子のコミュニケーションの違いを観察調査した結果、
「共有型しつけ」の親は子どもに考える余地を与える語りかけや誉め励ましを行い、それに子どもも呼応して主体的に考えたり工夫していたことがわかりました。
「強制型しつけ」の親は禁止や命令で子どもに指示を与えたり、過度に介入するため、子どもは考えることをやめたり、叱られるのを恐れていやいや取り組んでいることが多く見られました。*3
外部サイト子供が料理をすると良い効果あり、親子クッキングをしよう。
能力の高い幼児は小学校入学後も高い傾向あり
幼児調査に参加した児童を小学校まで追跡調査したところ、幼児期に読み書き能力、語彙力の高い幼児は小学校の国語学力も高い傾向にありました。
また、保育形態、しつけスタイルと学力の因果関係も見られました。
つまり、幼児期に「子ども中心の保育」を受けた児童、家庭で「共有型しつけ」を受けた児童は国語学力や語彙力が高くなっていました。
また、司法試験や医師国家試験を突破した家庭は共有型しつけが多かったことも調査で明らかになっているそうです。
どうやら早期教育を行うかどうかより、幼児期にどのような指導やしつけを行うかが将来の学力に影響を及ぼすようです。
子どもとのコミュニケーションの中で自主性や自信を持たせることが、大人になってからの学力、レジリエンス、挑戦力など、生きる力を育むと言えそうです。
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【参考文献】
*1 Cummins,J.(1984) Bilingualism and special education: Issues in assessment and pedagogy, Multilingual Matters, Clevedon
*2 岐阜市立女子短期大学研究紀要第66輯
小島ますみ「公立小学校における英語教育の早期化、教科化に関する一考察 (創立70周年記念特集号)」
https://gifu-cwc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=34&item_no=1&page_id=13&block_id=21
*3 教育社会学研究 100巻 (2017)
内田伸子「学力格差は幼児期から始まるか?―経済格差を超える要因の検討―」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eds/100/0/100_108/_pdf/-char/ja
30代大学教員
一児の父
京都大学大学院修了
博士(工学)
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