これまでの教育は知識をたくさん覚え、早く問題が解けることが評価されてきました。入試問題はそのような問題が多いですよね。
もちろんそうした力は必要ですが、創造的思考力や発想力が今後、必要になってくると言われています。その理由は人工知能の登場です。
知識を覚えたり、答えがある問題を早く解いたりする能力に関しては、人間は人工知能に勝つことはできません。
そこで、このコラムでは子供たちに必要な創造的思考力や発想力をどのように鍛えればよいか、その方法をお伝えします。このコラムを読んで、ぜひ皆さんも実践してみてください。
もくじ
これからの時代は新しいものを創り出す力が重要
人工知能の発展はすさまじいものがあります。例えば囲碁の世界では人間は人工知能に全く勝てません。
最近では医療分野や金融分野にも取り入れられており、その力を発揮しています今後、人工知能が活躍する分野はますます広がっていくのは間違いありません。
このように多くの分野で取り入れられている人工知能は、規則に従った仕事が得意です。
しかし、ルールから逸脱したものを生み出すことは苦手だと言われています。
そのため、人間はこれから新しいものを創り出す力、つまり創造的思考力・発想力を鍛えていく必要があるのです。
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創造的思考力・発想力とは?
創造的思考力・発想力が重要だと言われますが、そもそも創造的思考力・発想力とはどのような能力なのでしょうか。
創造的思考力・発想力とは新しいものを創り出す力のことです。よくクリエイティビティと英語で言われているものです。
創造力と言うと、デザイナーやイラストレーターのような特別な分野の天才的な人がすぐに思いつきますが、最近では「デザイン思考」と言って、ビジネスの分野で幅広く求められる能力になっています。
よく日本人は自由に何かを発想する力が弱いといわれています。
確かにこれまでの教育では正解を求めることが善とされてきました。もちろんそうした勉強をしてこなければ、新しい発想も生まれません。
知識も何もないところから、新しい発想は生まれないからです。
しかし、知識を身に付けた上で、どのように新しい発想を生むのか、また、それをどのように相手に説明するのかなど、そのやり方を勉強する必要性が出てきているのです。
サンリオや東京ディニーランドなどの開発業務に関わった「伝説のプランナー」であり、今では教育にも携わる久保田達也さんは東大新聞のインタビューの中でこう答えています。
エリートは発想力と創造性を鍛えよ
いわゆるCQ(Creative Quotient、発想指数)、つまり一つのことからどれくらいたくさんのことを連想できるか、という創造性の能力の方が大切です。それこそがAIにできなくて人間が得意なことだからです。AIを上手に扱う想像力の持ち主が時代のリーダーとなることは間違いないでしょう。
従来型の暗記型の旧日本教育は、AIを道具としてコントロールできる創造性教育へと変わっていくでしょう。実はアメリカの伝統校はそれにいち早く気づき、すでに教育の改善を進めています。
東大新聞 https://www.todaishimbun.org/kubotatu0704/
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創造的思考力・発想力を鍛える方法とは?
先ほど人間に必要なのは創造的思考力・発想力を鍛えることだとお伝えしました。創造的思考力・発想力を鍛えるというのは一見すると難しく見えるでしょう。
例えばデザイナーの仕事を見て、「これと同じことはできない」と思うかもしれません。つまり創造的思考力・発想力は才能がある人間しか持っていない力だと思いがちです。
しかし、実際には創造的思考力・発想力は鍛えることができます。しかも、子供がまだ小さい時であれば、創造的思考力・発想力を育てやすいのです。
ここでは創造的思考力・発想力を鍛えるために必要な子育てのポイントを5つ紹介します。
1.好奇心を育てること
創造的思考力・発想力を鍛えるためにはまず好奇心を育てる必要があります。
興味のあるものが増えることで、新しい刺激になり創造的思考力・発想力を鍛えることにつながります。好奇心を育てるために必要なことは、いろいろなものを子供に見せてあげることです。
自然の中に連れて行くのも良いですし、博物館などに行くのもの良いです。いろいろなものを見せてあげましょう。
2.表現力を磨くこと
創造的思考力・発想力を鍛えるためには、自分の考えを表現する力を磨く必要があります。
せっかく良いアイディアがあっても、それを表現できなければ意味がありません。表現力を磨くためには、表現する手段を学ぶ必要があります。
人間であれば言葉でしょう。言葉で自分の想いを表現できるようにする必要があります。
そのためには、子供との会話を大切にする必要があります。会話をする際に注意すべきことは、しっかりと文で会話すること、指示語を減らすことです。
家族だけでなく、誰でも理解できるような会話を心がけましょう。
3.考える習慣をつけること
考える習慣をつけることはとても大事です。
創造的思考力・発想力は考えた結果として生まれてきます。何か疑問がわいたときに「これは何だろう?」と考え続けることで、新しいアイディアが生まれてきます。
子供を見ていて間違えそうになると、先に教えてしまうことがあります。しかし、それでは考える習慣は身につきません。
子供が考えて答えを出すまで待つようにしましょう。そうすることで、考える習慣が身につき、創造的思考力・発想力が鍛えられます。
4.失敗をさせること
人間には失敗はとても大切なのですが、失敗は一般的に悪いイメージで語られます。確かにしなくても良い失敗をする必要はありません。
しかし、失敗することで、チャレンジしようという気持ちが生まれます。失敗を恐れるようになってしまうと、正しい答えばかりを求めるようになります。
人工知能の得意なことは正しい答えを出すことです。そのため、正しい答えを出しても人工知能よりも優れた答えを出せるわけではありません。失敗を恐れずに繰り返すことで、新しいアイディアが生まれます。
例えば、ノーベル賞を獲得した田中耕一さんは、間違えて別の薬品を使ったことが新たな発明に結び付いています。失敗することを恐れずに挑戦し続けた結果として、こうした偶然の発明ができたのです。
子育てでも子供が失敗しそうだなと思っても、あえて失敗させてみましょう。そうすることで、子供はどんどんチャレンジするようになるはずです。
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5.時間をかけてもいい
創造的思考力・発想力を鍛えるためには待つということがとても大切です。一生懸命考えているのに、「これでいいでしょ」と親が勝手に決めてしまうことがあります。
しかし、子供はじっくりと考えているのです。こうした時間をかけて考えることは創造的思考力・発想力を鍛えることにつながります。
時間をかけるというのは待つということも意味しているのですが、子供をずっと待ち続けるのは大変ですよね。適度に声がけをしつつ、無理のない範囲で待つようにしましょう。
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「子供の創造的思考力・発想力を鍛える」まとめ
これまで子供たちに必要な力として創造的思考力・発想力について説明してきました。これらの力は人工知能がさまざまな分野で活躍する中で、人間が生きていくために必要な能力です。
その力の育て方についてもここで説明していますが、すべての方法を実践するのは難しいかもしれません。
しかし、創造的思考力・発想力は、これからとても大切な能力の一つになってきます。そうした能力を鍛えるためにも、上記の方法を少しずつでもいいので、実践してみましょう。
*参考文献:ライフロング・キンダーガーテン 創造的思考力を育む4つの原則
著者のミッチェル・レズニックさんは教育テクノロジーの専門家で、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授です。プログラミング教室の教材として使われている「レゴ マインドストーム・ロボットキット」などを共同で成し遂げてきた人です。また、プログラミング教室で大人気の「スクラッチ(Scratch)」を開発するチームも率いてきたすごい人です。