「子どもには色々な体験をさせてあげたい」と思うのが親心というものですよね。
子どもと一緒に色々な体験教室に顔を出したり、子どもにさまざまな習い事をさせたり、連休があれば家族で旅行に出かけたりしているという人は、星の数ほどいることでしょう。
しかし、体験をたくさんさせればさせるほど、子どもの力を伸ばすことができるというわけではありません。
何かしらの体験をした後、体験から何を学んだのかを振り返ることが無ければ、体験を有意義なものに昇華することはできません。
今回は生井裕子先生他の論文「小学生の【体験から学ぶ力】を促進する授業実践とその評価」に基づいて、小学生に体験から学ぶ力を身に付けさせるための方法を紹介します。
家庭で行うさまざまな体験活動をより有意義なものにしたいと考えている人は、ぜひ、親子で実践してみてくださいね。
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子どもにはいろいろ体験させたい
経験主義教育の大家と称されるアメリカの哲学者ジョン・デューイは「思考と呼ばれる発展的経験の最初の段階は経験である」と述べています。
これは、経験の重要性のみならず、経験の内容について反省することの重要性をも訴えかけている言葉です。
このデューイの言葉に影響を受けたのか、組織行動学者デービッド・コルブは、デューイの経験と学習に関する理論を再構成。
以下のような経験学習モデルを発表しました。
具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験
この4つのサイクルが循環することで、具体的な経験から新しい気づきを見出すという学習が生じるというのがコルブの論。
この4つのサイクルのうち、自らの体験を自分の言葉で語り、体験を俯瞰的な観点、多様な観点から振り返る「内省的観察」と、それをもとに自ら体験に何らかの意味づけをする「抽象的概念化」は特に重要なファクターであると考えられています。
この「内省的観察」と「抽象的概念化」をうまく行う方法として挙げられるのが、早稲田大学でも実践されている「体験の言語化」です。
生井さん・中島さん・山下さんは小学生でも「体験の言語化」活動ができるよう、「リフレクションワーク」を考案し、実践しています。
以下より、リフレクションワークの実践方法について紹介しましょう。
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自宅でもできるリフレクションワーク
リフレクションワークは4人の小グループをつくり、1人の主人公と3人のメンバーを決め、4つのステップで対話的に体験を振り返るものですが、子を主人公、親をメンバーに据え、1対1で行うことも可能です。
リフレクションワークの4つのステップは以下のとおりです。
- 主人公が体験を語る(「最近やってみてうまくいったこと」「大人を嫌だと感じた瞬間」など)
- メンバーが主人公に質問する(「自分の考えと違うと思った部分は?」「日常生活でどう生かせそう?」など)
- メンバーが主人公に感想や気づきをフィードバックする(「主人公のここがすごい」「ここが主人公らしい」など)
- 主人公が気づきやこれから行動してみたいことを語る(「今度やってみたいこと」「次から気をつけようと思うこと」など)
リフレクションワークは特別な体験をしていない日であっても、テーマさえ決めればいつでも実践できます。
そして、これを何十回と繰り返していけば、何らかの体験をしている最中に体験の意義を見出そうと心がけるようになり、体験後も的確な意味づけをすることができるようになるはずです。
親は子どもの体験を有意義なものにするためにも、子どもたちの経験をより深く掘り下げられるメンバーになりましょう。
体験から学ぶ力はどのくらい身に付いた?おさえておきたい判断基準
なお、リフレクションワークの後は体験について日記を書かせることをおすすめします。
子どもが書いた日記を分析すれば、体験から学ぶ力がどのくらい身に付いたかを測ることができるからです。
子どもの体験レベルを測る際には、生井さん・中島さん・山下さんがコルブの経験学習モデルに基づいて作成した以下の判断基準を用いると良いでしょう。
Lv.0:起きていたこと、事実の単純な記述をしている(「今日はゲームをした」など)
Lv.1:体験の単純な描写や感想、出来た・出来ないにまつわる記述をしている(「ゲームをして楽しかった」など)
Lv.2:体験に加え、その理由を記述している(「ゲームで難しいステージをクリアできてうれしかった」など)
Lv.3:体験に基づき、その子なりの判断や意見、気づきを記述している(「ゲームで難しいステージをクリアできた。ネットでしっかり情報収集をしたからクリアできたのだと思う」など)
Lv.4:体験に基づき、状況を俯瞰した上で、その子なりの視点によって状況を変化させようとしている(「ゲームで難しいステージをクリアできた。ネットでしっかり情報収集をしたからクリアできたのだと思うが、今後は自力でクリアできるようになりたい」など)
レベルの数字が上がるほど、子どもの体験レベルは高まっていると判断することができます。
やはり、より高いレベルを目指すためには、リフレクションワークでのサポートが必要不可欠です。
日記をしっかり分析してわが子に何が足りないのかをおさえれば、効率的なリフレクションワークを行うことができるはずなので、ぜひ実践してみてください。
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「体験を通して学ぶ力」まとめ
体験から学ぶ力を身に付けることができれば、どれほど小さな体験でもより有意義なものに昇華できるようになるでしょう。
今回ご紹介した「リフレクションワーク」を親子で実践し、二人三脚で体験から学ぶ力を高めていってくださいね。
【参考文献】
小学生の「体験から学ぶ力」を促進する授業実践とその評価 清泉女学院大学 生井裕子先生ほか
https://seisen-jc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=512&item_no=1&page_id=27&block_id=29
ちぃちゃんママ
2児の母。
国立大学教育学部の大学院修了。
教育関連の学術論文を多数読破。
母親目線でわかりやすく学術論文を紹介します。