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再エネ普及の救世主?揚水発電のポテンシャルとは?

揚水発電、再生可能エネルギー

世界の国々が、地球温暖化を止めるため温室効果ガスの削減に取り組んでいます。

日本も「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という高い目標を掲げています。

そのためには今後、石油、石炭、天然ガスを燃焼させるような発電を減らさなければなりません。

原子力発電については、EUで容認意見が出され、脱原発を進めるドイツが反対するなど議論が活発化しています。

しかし、福島原発事故を経験した日本では議論の入り口にも達しておらず、再生可能エネルギーへのシフトを行うことになっています。

その際に重要となるのは発電に加えて、発電した電気を蓄える蓄電の技術です。今回はその中でも注目すべき揚水発電を紹介します。

揚水発電

出典:首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/yousui.html

知っておくと便利な電力の単位

揚水発電の前に、電力って何?という人のために、電力の単位について簡単に説明していきましょう。

電力とは、一定の時間の間に電流がする仕事のことで、単位はW(ワット)です。電気代の明細にkWh(キロワットアワー)という単位が書かれていますが、1kWを1時間分使ったことを表します。

たとえば100kWhというのは、100kWを1時間、あるいは1kWを100時間使ったということとなります。

一般家庭の1ヶ月あたりの消費電力は平均で360kWh。1時間あたりに換算すると、0.5kW程度が一般家庭の平均電力使用量となります。

このような数値は覚えておくと、省エネや環境に関する話題が理解しやすくなります。

大まかな値にはなりますが、電圧使用量の平均は世界全体で5000GW、アメリカ1000GW、日本200GW、中規模都市1GW、小さい町1MW、一家庭1kWと覚えておくと、ニュースなどで原発一基分1GWという話題の際に、数値の大きさのイメージがつかみやすくなります。

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温室効果ガス実質ゼロに貢献できる再生可能エネルギーは?

さて、話を元に戻しましょう。

再生可能エネルギーというのは、自然界から半永久的に継続して利用できるエネルギーのことですが、日本で2050年までに一定の発電量を期待できるのは、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電くらいです。

ただし、水力発電には環境の面で問題があります。一つは地域の人々や生物が住む場所を追われることです。

また、土壌に含まれる炭素が多い場合、地面を水で覆うと炭素がメタンに変わり、大気中に放出されるおそれがあります。

このようなメタンは、場所によっては石炭火力発電の50年から100年間分の温室効果ガスを出すと指摘する研究もあります。

地熱発電も実際に掘ってみないと、どれくらいの発電量がどの期間得られるかわからないため、計画に組み込みづらいという問題があります。また、立地が国立公園や温泉地と重なることから発生する問題もあります。

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太陽光発電、風力発電の弱点

そして太陽光発電、風力発電にも弱点があります。

それはエネルギー密度の低さ、適地の偏在、間欠性という点です。

エネルギー密度は、一定の面積あたりで発電できる電力のことをさしますが、再生可能エネルギーは原子力発電や火力発電と比べると2、3桁くらい低い数値になります(参考文献①)。

適地の偏在は、太陽光発電や風力発電に適した場所が限定されることから生じます。

雨が多かったり、風が吹かない場所に発電所を設置することはできません。一方で、原子力発電や火力発電の場合、燃料さえ運べばどこにでも設置できます。

これらの発電技術の場合、電力の必要な都市の近くに配置できるため、送電コストも低くなります。

太陽光発電、風力発電は適地から遠くの都市まで電気を送電する必要がありますが、既設の送電網が使えないため、新たな送電網を設置するコストがかかります。

間欠性は、太陽光発電や風力発電が連続して発電できないという弱点です。

太陽光発電は太陽の照っている時間、風力発電は風の吹く時間しか発電できません。

このため太陽光発電や風力発電では、発電した電気をどこかに溜めておかなければ、安定した電力を供給できないこととなります。

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揚水発電のポテンシャル

ここで重要となるのが、蓄電の技術です。

バッテリーは蓄電技術の一つですが、蓄電性能が高くない上、皆さんがスマートフォンで経験しているようにすぐに劣化してしまいます。

バッテリー技術にブレークスルーが起これば良いのですが、性能が上がっても現在より数倍程度しか向上しないのではないかと予想されています。

そこで注目されるのが揚水発電です。揚水発電は水を上げ下げして発電する方法です。

電気の安い時間帯に水を高い位置にポンプで動かしておき、電気が足りないときはそれを下流に流してタービンを回して発電します。

したがって、電力需給調整のための蓄電システムとして利用できるのです。

揚水発電の将来性については、国立研究開発法人科学技術振興機構・低炭素社会戦略センターが出した「日本における蓄電池システムとしての揚水発電のポテンシャルとコスト」で詳しく述べられています。

この報告書によると日本には40箇所の揚水発電があり、合計26GWの設備容量、1回あたり5時間発電するとして130GWh/回の蓄電容量があるそうです。ただし、現状の設備利用率は3%と低くとどまっています。

また、日本には揚水発電の適地はあまり残っておらず、今後は既存のダムの近くに池を作り、その間で水を上げ下げする方法が有効とされています。

現在、全国に2700カ所あるダムを利用すると、一個あたり50MWhの中小規模の揚水発電所をたくさん作ることができます。

この方法では20000カ所の揚水発電所の建設が可能で、計算上は1回の上げ下げの運転で1000GWhの蓄電容量が期待できます。

2050年に必要な蓄電池容量は500GWhとされており、その倍の蓄電容量となります。

しかしながら、揚水発電にはコスト面の課題が指摘されています。

発電コストを蓄電池と比べると、1.4倍の22円/kWhとなっており、今後コストを減らすことが不可欠となります。

また豪雨の多い日本では、中小サイズの池を作ることで決壊につながらないようにしなければなりません。また、山を切り開いて池にするので、その際に温室効果ガスが出る可能性も考えられます。

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温室効果ガス実質ゼロには総合的なエネルギーミックスが必要

検討すべき課題はありますが、既存のダムを利用する中小規模の揚水発電には、これまでにない分散化した蓄電システムとして大きな期待ができます。

安定した発電量、コスト、環境への負荷など、それぞれの発電技術の長所、短所を総合的に考えなければいけません。

全国各地の再生可能エネルギーと、揚水発電を組み合わせることで、2025年温室効果ガス実質ゼロを実現したいものです。

【参考文献】
①ビル・ゲイツ著、山田文訳「地球の未来のために僕が決断したこと-気候大災害は防げる」(早川書房、2021年8月)
②国立研究開発法人科学技術振興機構・低炭素社会戦略センター「日本における蓄電池システムとしての揚水発電のポテンシャルとコスト」(2019年1月)

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この記事を書いたのは

大学の先生

あっ君パパ
30代
京都大学大学院修了
博士(工学)