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言語によって思考が変わる。具体例、バイリンガルはどうなるの?

「サピア・ウォーフの仮説、言語的相対論

  • 日本人が英語で話すと、いつもより社交的になる。
  • 英語を話す人は自己の主張がはっきりとしている。
  • ドイツ語を話す人は厳格な説明をする。

そんなイメージはありませんか?

今回の話題は、使用する言語が人の認知や思考に影響するのか?という疑問についてです。

実は「使用する言語によって話者の思考が影響を受ける」という考えは、「サピア・ウォーフの仮説(言語的相対論)」と呼ばれており、神聖ローマ帝国の皇帝やシェイクスピアもこの話に関して文献を残しているそうです。

そもそもこの仮説は「どのような言語でも現実世界は正しく把握できる」という定説に対する疑問から生まれた仮説です。

そして、この仮説を裏づける研究がいくつか報告されています。

関連ページ英語を習得には視覚イメージが重要!東大の研究論文より

「右、左」の言葉がない民族の方向感

言語によって思考が変わる。具体例、バイリンガルはどうなるの?

あなたは、「南西を指差してください」と言われて、すぐに正しい方向を差せるでしょうか?

初めての場所にいると、方角さえわからないことが多いですよね。

しかし、オーストラリアのアボリジニのクウク・サアヨレッテ族なら、子どもでも簡単に答えることができます。

なぜなら、彼らの言語には「右」「左」の言葉がなく、あらゆる位置や方向を「東西南北」の方角で言い表すからです。

たとえば「あなたの北側にスマホが置いてあるよ」とか、「今日はどちらの方に行くの?」「北北東の方へ」というように方角で位置や方向を表現します。

そのため、クウク・サアヨレッテ族は方角に非常に敏感です。

さらに、クウク・サアヨレッテ族には面白い特徴があります。

一人の人間の10代、20代、30代、40代、50代の顔が写っている5枚の写真があるとします。

「この写真を古い順番に並べてください」と言われたら、あなたはどのように並べますか?

英語圏の人なら左から右に並べるように思われます。現代の日本人でも同じです。

右から左に文章を書くアラビア語やヘブライ語を話す人なら、右から左に並べるかもしれません。

さて、クウク・サアヨレッテ族はどう並べるでしょうか?

彼らは南を向いている時は左から右に並べ、北を向いている時は右から左に並べ、東に向いている時は奥から手前に並べます。

右や左という言葉がない彼らは、どの方向を向いていても東から西に並べるのです。

つまり、彼らにとって時間の向きは自分の体ではなく、大地に対応していると言えます。

【参考文献】レラ・ボロディツキー「言語はいかに我々の考えを形作るのか」(TED、2017年)
https://www.ted.com/talks/lera_boroditsky_how_language_shapes_the_way_we_think

英語とドイツ語の思考方法の違い

サピア・ウォーフの仮説、言語的相対論

ランカスター大学の言語学者、パノス・アサナソプロス氏が、言語の違う人間が同じ写真をどう捉えるか?という研究を発表しました。

被験者に、「自動車の方向へ向かって歩く人物」の動画を見せます。

その様子を言葉で描写してもらうと、英語を母国語とする人の多くは「人が歩いている」動画だと答え、ドイツ語を母国語とする人の多くは「自動車に向かって歩いている人」の動画だと答えました。

英語を話す人は人の行為に注目するのに対して、ドイツ語を話す人は人の行為に加えてその目的にも注目する傾向があるようです。

【参考文献】
Panos Athanasopoulos, Emanuel Bylund, Guillermo Montero-Melis
“Two Languages, Two Minds: Flexible Cognitive Processing Driven by Language of Operation”
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797614567509

バイリンガルの思考方法はどうなっている?

バイリンガル

それでは一人で二つの言語を話すバイリンガルでは、どうなるのでしょうか?

ランカスター大学の研究チームは、英語とドイツ語を母国語にする人たちに、別の動画を見せる実験も行いました。

動画は「人の目的があいまいなもの」「人の目的が明らかなもの」「そもそも目的に関する情報がないもの」の3種類です。

被験者にこれらの動画が「目的が明らか」か「目的が明らかではない」かを、選んでもらいます。

この研究のポイントは、動画が3種類あるのに回答は2種類しかないことです。「人の目的があいまいな」動画にどう反応するかの観察が目的です。

その結果、英語を使う人は「人の目的があいまいな」行動の場合、「目的が明らかではない」と回答することが多く、ドイツ語を話す人は「目的が明らか」と答える事が多く見られました。

つまり、ドイツ語を話す人はあいまいな行動であっても、そこに目的を汲み取る能力が高いと考えられます。

それでは、バイリンガルの場合はどうだったでしょうか?

英語もドイツ語も流暢に話す人々にこの実験を受けてもらったところ、答えは被験者がその瞬間に使っていた言語によって変わることが明らかになりました。

バイリンガルがドイツ語を使っている時の回答はドイツ語を母国語とする人と近くなり、英語の時は英語を母国語とする人と近くなりました。

さらに、実験の途中で使用する言語を変えてもらうと、それに合わせて答えも変わりました。

語学を学習する新しい価値

言語を学ぶことは、異文化を学ぶことと言われます。

使用する言語で思考方法が変わるならば、違った価値もありそうです。

たとえば、新たな思考方法を獲得するために、母国語と異なる体系の言語を学ぶことが考えられるかもしれません。

この記事を書いたのは

大学の先生

あっ君パパ
30代
京都大学大学院修了
博士(工学)