最近、AI(人工知能)についての進化が凄まじくニュースなどで見ない日はないほどです。
そんなニュースの中などでシンギュラリティという言葉を聞いたことはありませんか?
今回は人工知能の概念のなかでも最も注目されている概念の一つであるシンギュラリティについてご紹介いたします。
シンギュラリティ(技術的特異点 )とは?
まず、シンギュラリティとはどういう意味でしょうか?
日本語では「技術的特異点」と訳される事が多いです。
特異点とはもともとは数学の用語で、ある点で値が無限になってしまうような点のことです。
つまりシンギュラリティとは端的に言うと、「コンピュータ技術の発達によって、人工知能が大幅に進化し、人間の知性を超えることで、我々の生活に大きな変化が起こるのではないか」という概念のことです。
まずコンピュータの性能について考えてみましょう。
一般的にコンピュータの性能はコンピュータの中に存在するトランジスタ(電気の流れをコントロールし、コンピューターに指示を伝える信号の役割をする部品)の数に比例すると言われています。
1970年時点での集積回路に搭載されているトランジスタの数はおよそ4,000個でしたが、トランジスタの数はどんどん増大し、およそ18ヶ月から24ヶ月ごとに倍になってきています(この法則をムーアの法則と言います)。
この法則はあくまで経験的なものなのですが、今でもそれなりの精度で通用しつつあります。
つまり、現代であってもコンピュータの性能はどんどん向上し続けており、今後もその進化は続くと予想されています。
この予想によると、2029年にはコンピュータに搭載されているトランジスタの数は人間の脳の中にあるニューロン(人間の行動を信号として伝える脳神経細胞)の数を超え、非常に高度な知能を持つのではないかと予測されています。
もちろんトランジスタの数がニューロン数を超えたからといって、すぐに人間を超える知能を持つわけではありません。
しかし、現在機械学習で主流となっているディープラーニングなどは人間の脳を模擬したモデルを利用しているため、人間のニューロンと同じ数の伝達信号数(ノード)を利用することができれば、非常に高度な知能をコンピュータが持つ可能性は決して否定できません。
人工知能が人間を超える日はいつ?来ないかも?
さらに2045年になると、コンピューター・人工知能の能力が、全人類を合わせた位の知能を持つようになるのではないかと予測されています。
こうなると、コンピュータがコンピュータを作る、といったことも可能になり、コンピュータの進化に更に拍車がかかり、人間を超える知性を持つようになる可能性がますます高まるでしょう。
↑出典:総務省 インテリジェント化が加速する ICT の未来像に関する研究会
報告書 https://www.soumu.go.jp/main_content/000363712.pdf
実は既に一部の人工知能は人間を超える知性を持ち始めています。
特にコンピュータが学習しやすいゲーム分野ではその成果が著しいです。
チェスでは1997年に「ディープブルー」と名付けられたコンピュータが当時の世界チャンピオンに勝利し、将棋でも2012年にコンピュータが長年プロ棋士として第一線に立っていた米長邦雄氏に勝利しています。
さらにGoogleの子会社であるDeepmindという会社は、2016年にAlphaGoを開発し、当時の世界トップ選手であったファン・フイ氏に勝利を収めています。
Deepmindは他にもスタークラフト2というリアルタイムストラテジーゲームでAlphaStarというAIを開発し、トッププレーヤーに勝利しています。
このようにコンピュータは一部の分野ではすでに人間以上の実力を持ち始めています。
⇒脳がインターネット化するメリット・デメリットを工学博士がかわりやすく解説。
シンギュラリティに備えてどう過ごせば良い?
では、コンピュータが人間以上の知性を持つ時代に向けてどのように過ごすべきでしょうか?
コンピュータが人間以上に賢くなると、多くの人はコンピュータに仕事を奪われることになってしまうのでしょうか?
それとも、コンピュータが仕事を代わりにしてくれるので、私達は仕事をせずに毎日遊んで暮らすことができるようになるのでしょうか?
私の答えはどちらもノーです。
おそらくコンピュータが高い知性を持つようになったとしても、人々は仕事をし続けるでしょう(もちろん今より仕事はずっと効率良く、楽になるかもしれませんが)。
この理由は、コンピュータが登場する前後で人々の生活がどう変わったか、を考えて見ると明らかです。
コンピュータや家電が存在することで人間の生活は非常に快適になりましたが、コンピュータが存在することにより会議の資料をパワーポイントで作ったり、スマホで数多くのメールを返したり、というようにコンピュータが存在しなかった頃に無かったような仕事が数多く誕生しています。
そのため、コンピュータが人間以上の知性を持つかもしれない2045年には、今の時代には存在しないような仕事もたくさん誕生するでしょう。
例えば、例えばコンピュータが暴走しないように監視をする、などという仕事が新しくできたりするかもしれません。
これらの新しい仕事は高度なAIに関連した仕事になる可能性が高いと思われます。
2045年に備えるのであれば、このようなAIを使いこなせるようになっておくことが重要となるでしょう。
30代大学教員 アメリカ在住
京都大学大学院修了 博士(工学)