子どもの習いごとと言えば、学習塾やプログラミングなどの勉強系と、スイミングやピアノなどのスポーツ・文化系がありますね。
学力向上を目的とするなら勉強系を選択すると思いますが、スポーツ・文化系の習い事でも、技術を習得するだけでなく集中力など学力向上につながる効果があります。
その中でも、ピアノを習うとIQ(知能)が高くなるというお話を紹介します。
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もくじ
音楽は脳に良い影響がある?
「モーツァルトの音楽を聴きながら空間把握の知能検査を行うと、一時的に高得点を得られる」という研究が1993年にアメリカで発表されました。
その研究結果は「モーツァルト効果」と呼ばれ、子どもたちにモーツァルトを聴かせるというブームが起こりましたが、その後の研究でモーツァルトの音楽に限った効果ではないとされました。
しかし、音楽と脳に関する多くの研究が行われた結果、音楽が子どものIQや学習に良い影響を与えることが明らかになりました。
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楽器の演奏が効果的
東北大学・瀧靖之教授は、楽器の演奏が脳へ好影響を与えると言っています。
楽器の中でもピアノが良いそうです。ピアノの演奏によって脳のたくさんの領域が活性化するためです。
ピアノの演奏には、様々な脳の領域が関わります。楽譜を見るという作業は視覚野で処理され、側頭頭頂部と前頭前野で一時的に記憶されます。
実際に弾く際には鍵盤の場所や距離感を認知するために、頭頂葉背側経路で空間認知を行います。そして、前頭葉運動野から体のあらゆる部分へ、体を動かす指令が出ます。
ピアノから出た音は、聴覚野で音情報として受け取られ、言語野の働きで、ド・レ・ミ・ファ…の音として理解します。
この音を聴いて、もっと大きい音を出したい、早く弾きたいといった、運動の調節に入ります。この時には、運動野や聴覚野だけでなく、視床、脳幹、脊髄などが複雑に関わります。
専門的な用語でわかりにくいかもしれませんが、ピアノを弾くためには、「見る」「たくわえる」「弾こうとする」「弾く」「聴く」「フィードバック」という脳の作業が、瞬時に同時進行で行われることが理解できると思います。
これがピアノの演奏が脳を活性化させる理由なのです。(1)
(1) PTNA「脳科学者・瀧靖之先生が答える、ピアノって本当に脳にいいの?」
https://research.piano.or.jp/series/piano_happen/brain/index.html
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IQだけでなく、HQも向上させる
武蔵野学院大学・澤口俊之教授は、ピアノの演奏はIQだけでなくHQを高めると言っています。
HQとはHumanity Quotient(人間性知能)の略で、IQといわゆるEQ(情動的知能)を含む総合的な能力で、問題解決力や社会性など社会生活に重要な役割を持つ知能としています。
小学校低学年の子どもの習いごととHQの関係を調べたデータによると、学習塾、英会話、習字、スポーツなどの習いごとと較べて、ピアノを習っている子どものHQが突出して高くなったそうです。(2)(3)
ピアノ演奏のトレーニングを続けると、情報を効率的に伝達しようとして、脳の関連領域が発達していきます。
ピアノの演奏は両手で行うため、それぞれの領域だけでなく、左右の脳をつなぐ脳梁も発達し、左右の脳の連絡がスムーズになります。このことが知能を総合的に高めることにつながると思われます。
脳科学者の澤口俊之先生も「ワーキングメモリーが伸びる」のでピアノは脳に良いとおっしゃっています。
(2) PTNA「今こそ音楽を!脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー」
https://www.piano.or.jp/report/04ess/livereport/2015/07/29_20010.html
(3) 澤口俊之「学力と社会力を伸ばす脳教育」(講談社,2009年)
音楽を学ぶと語学や数学の能力が高くなる?
音楽に関わる脳の領域は、聴覚野、言語野など言語の領域とオーバーラップしています。そのため、子どもの頃にピアノ演奏で聴覚野や言語野を活性化させると、後に英語などの言語を学ぶ際の素地をつくることができると言われています。
また、音楽には数学の能力を高める効果もあるようです。音階、リズム、音楽理論の基本は数学でできています。意外に思われるかもしれませんが、音が音波という物理的な運動ということを考えれば納得できると思います。
音楽を学ぶことは数学的な論理性を学ぶこととなります。このようにピアノを弾くことは、言語や数学の能力を向上させることにつながるのです。
難関大学生はピアノを習っている
カシオ計算機株式会社が、ピアノと学力に関する調査を行っています。
東大、京大、早大、慶大の在校生・卒業生の20~30代男女1,188名を対象に、子ども時代の習いごとをたずねたところ、43%がピアノを習った経験があると答えています。ピアノを習っている一般的な割合は20%弱ですので、かなり高い数値と言えます。
また、ピアノ経験者の73%が「ピアノは脳の機能を向上させる上で役立つと思う」と、83%が「子どものうちにピアノを習うことはおすすめできる」と回答しています。
ピアノを習うと難関大学に合格できるかどうかはわかりませんが、学力への影響が期待されます。少なくともピアノを習ったから勉強がおろそかになるという心配はなさそうです。
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ピアノは何歳までに習うべきか
ピアノは何歳までに習い始めれば良いのでしょうか?
脳には臨界期があります。臨界期を過ぎると、その事柄を学ぶことは非常に困難になります。音楽はできれば4、5歳まで、遅くとも8、9歳までに習い始めた方がよいといわれています。
ただし、イヤイヤ習うと脳の働きは抑制されてしまいます。楽しく練習することで脳の働きは活性化されます。子どもがピアノを習いたいと思った時が、最適なタイミングかもしれません。
また、高齢になってもピアノの脳への効果があるという研究結果が発表されました。
南フロリダ大学Jennifer Bugos氏らの研究では、60歳から85歳の高齢者がピアノの個人レッスンを受けたところ、記憶の保持、言葉の流暢さ、情報処理、計画力について明らかな改善を示したとしています。
何歳になってもピアノを習うことには、脳を活性化させる効果があるようです。(4)
(4) J. A. ブゴス「ピアノ個人レッスンは、高齢者の実行機能と作業記憶を強化する」
Individualized Piano Instruction enhances executive functioning and working memory in older adults: Aging & Mental Health: Vol 11, No 4 (tandfonline.com)
ピアノは人生を豊かにする
昨年のG7外相会合の際に、日本の林芳正外相が「イマジン」のピアノ演奏を披露し、各国外相から大きな拍手を受けました。ピアノを習うと、生涯、演奏を楽しむことができ、大人になってからのコミュニケーションにも役立ちます。
音楽の歴史や文化に興味を持つことで、教養も広がります。子どもの頃にピアノを習うことは、知能を高めるだけでなく、人生を豊かにすると言えそうですね。
【参考文献】
(1)PTNA「脳科学者・瀧靖之先生が答える、ピアノって本当に脳にいいの?」
https://research.piano.or.jp/series/piano_happen/brain/index.html
(2) PTNA「今こそ音楽を!脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー」
https://www.piano.or.jp/report/04ess/livereport/2015/07/29_20010.html
(3)澤口俊之「学力と社会力を伸ばす脳教育」(講談社,2009年)
(4) J. A. ブゴス「ピアノ個人レッスンは、高齢者の実行機能と作業記憶を強化する」
Individualized Piano Instruction enhances executive functioning and working memory in older adults: Aging & Mental Health: Vol 11, No 4 (tandfonline.com)
30代
あっ君パパ
京都大学大学院修了
博士(工学)
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