皆さんは、地球の中身がどうなっているか、について考えたことはありますか?
実は地球は卵のような構造をしており、殻のような「地殻(プレート)」という薄い層の下に、「マントル」という厚い層があります。
さらにその下には、「核」という鉄でできた玉があります。この玉は外側が液体である「外核」と内側が固体である「内核」から構成されています。
このような説明は聞いたことがある方もおられるかもしれません。しかし、内核についてはその動きや性質が不明な点が多くあるということはご存じだったでしょうか?
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地震の波を使って地球の中身を明らかに?
北京大学のイー・ヤン氏とシャオドン・ソン教授という研究者たちが、地震波を使って内核の動きを調べ英科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス』に掲載しました。
地球の内核の回転に関する新しい発見を英科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス』地震波というのは、地震や爆発などで発生する音波です。
これらの音波は地球中を伝わっていきますが、途中で反射したり屈折したりします。
反射というのは鏡に映ったように跳ね返ることですし、屈折というのは水中で見える棒が曲がって見えることです。
これらの現象を利用して、音波がどこから来てどこへ行ったかを計算することで、内核表面付近の動きを推定することができます。
彼らは1995年から2021年までの60年間に発生した約1000回分以上もの地震波を詳細に調べました。その結果、彼らは驚くべきことに気付きました。
それは、2009年ごろまでは地表より速く回転していた内核表面付近が突然停止し、その後逆回転し始めたことです。
これまで観測された最長期間(12年間)続いているこの現象は、「超回転」から「逆回転」への変化だけではなく「停止」の期間も含めて、内核表面付近の動きが非常に不安定であることを示しています。
どうして内核の回転は変化したの?
これは何故起こったのでしょうか?実は、それはまだ分かっていません。
考えられる原因の一つとしては内核表面付近の動きが完全な球体というわけではなく、ムラがあることです。
内核表面付近には、地表の山や谷とは違って見た目には分からないけれど、高さや温度や密度や流れなどが違う場所があります。
例えば、高い場所では音波が速く伝わりますし、低い場所では音波が遅く伝わります。また、温度が高い場所では音波が大きくなりますし、温度が低い場所では音波が小さくなります。
密度や流れも同様に音波に影響を与えます。これらの違いを利用して、音波の時間差や振幅変化から内核表面付近の動きを推定することができます。
しかし、内核表面付近の「山」と「谷」は固定されているわけではありません。時間経過や外部から受ける力等々様々な要因で変化します。
例えば、「山」が崩れたり、「谷」が埋まったりすることもあり得ます。また、「山」と「谷」自体も回転したり移動したりすることもあり得ます。
これらの「山」と「谷」が内核表面付近の動きに影響している可能性があります。
地球にどんな影響が起こる?
では、この内核表面付近の動きが変わったら、地球にどんな影響があるでしょうか?
実は、それもまだ分かっていません。しかし、内核表面付近の動きは地球磁場やプレート運動などに関係しています。
地球磁場というのは地球を取り巻く磁力線で、コンパスやGPSなどに使われています。
プレート運動というのは地殻が浮かんでいるマントル上で移動することで、大陸や島々を作ったり壊したりします。
これらは私たち人間や生物にとって重要な役割を果たしています。
例えば、地球磁場は宇宙から来る有害な放射線から私たちを守ってくれますし、プレート運動は火山や温泉など自然現象を起こします。
もしかしたら、内核表面付近の動きが変わったら、これらも変化するかもしれません。
しかし、心配する必要はありません。内核表面付近の動きが変わってもすぐに影響が出るわけではありません。
また、内核表面付近だけではなく外核やマントルや地殻など他の層も関係しています。それら全てが連携しなければ大きな変化は起こらないと考えられています。
直接見ずに、中身を解明する
この研究は、地球の内核の動きや性質を理解する上で重要な貢献をしています。
内核の動きは地球の磁石や大陸の動きなどに関係しており、地球の歴史や未来にも影響を与える可能性があります。
しかし、内核は直接観測することができないため、地震波など間接的な手段でしか調べることができません。
そのため、内核の動きや性質についてはまだ多くの謎が残っています。この研究は、地球最大の謎の1つである内核に迫る画期的な成果です。
実際には見ることができない地球の中身を地震波を使って調査することができるというのは非常に面白いですね。
皆さんも地震波を使って自分で調べてみたいと思いませんか?そうしたら、あなたも新しい発見をできるかもしれませんね
【参考文献】
(1) 地球の内核が回転停止か、逆回転の可能性も 新研究
https://www.cnn.co.jp/fringe/35199134.html
(2) Multidecadal variation of the Earth’s inner-core rotation
https://www.nature.com/articles/s41561-022-01112-z
あっくんパパ
30代 博士(工学)
京都大学大学院修了
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