「子供は未熟者だから、感情をコントロールできなくても仕方がない」と諦めているママはいませんか?
そのような悠長なことは言っていられません!
一昔前と比べ、勉強でもスポーツでも子どもたちに求められる力は格段に高くなりました。
このような時代において、子どもたちの暴力やいじめなどの問題行動は年々増加。
子供たちにのしかかる期待という名の重圧の大きさによる悪影響が日本のみならず世界中で問題になっています。
しかし、世界が更なる進歩を望む以上、残念ながら子どもたちにかかるストレスを軽減してあげることはほぼ不可能です。
では、子どもたちのために大人ができることは何か。
答えはただ1つ。
幼いうちから自分の力でストレスを受け流すことができるよう、感情をコントロールする力をしっかりと身に付けさせてあげることです。
今回は本田恵子先生(早稲田大学教授)の論文「小学校における予防的心理教育としてのアンガーマネージメントDプログラムの理論的枠組み」に基づいて、小学校の中・高学年向け「子どものアンガーマネージメントプログラム」を紹介します。
わが子がこれからの時代を生き抜けるよう、高い人間力を身に付けさせてあげたいと考えているパパママは、ぜひ、親子で実践してみてください。
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もくじ
子供のアンガーマネージメントプログラム(小3以上)
本田先生は子供の感情をコントロールする力を伸ばすために有効な「子供のアンガーマネージメントプログラム」として、次のような実践例を提示しています。
- 第1課程:気づき
- 第2課程:知的理解
- 第3課程:感情的な受容
- 第4課程:新しい行動パターンの習得
- 第5課程:新しい行動パターンの練習
以下より、それぞれの課程について詳しく見ていきましょう。
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第1課程:気づき
まず、日常で体験したことがある出来事や起こりがちな出来事を例に挙げ、その出来事が起こったとき、自分の感情はどのように揺れ動いたか、あるいは、どのように揺れ動くのかについて気づかせましょう。
たとえば、「友達が勝手に自分のおもちゃを取っていったとき、どう思った?」と聞いてみるとします。
そうすると、多くの子供は怒りの感情を覚えたと答えるでしょう。
続けて、感情を落ち着けるために、自分はどうしたかを聞き取ります。
子供の感情・行動を聞き取ったら、「友達が勝手に自分のおもちゃを取ったときは、怒っておもちゃを取り返すんだね」と子どもの発言をまとめてあげてください。
そうすれば、子供は自分の感情の動きや行動のパターンにはっきりと気づくことができますよ。
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第2課程:知的理解
続いて、自分の感情の動きや行動が好ましいものかどうかを分析させます。
たとえば、第1課程で「友達が勝手に自分のおもちゃを取ったときは、怒っておもちゃを取り返す」という行動パターンに気づいた子どもには、複数人の友達の名前を挙げ、「Aくんにやったらどうなる?」「Bさんにやったらどうなる?」など、想定されるさまざまな相手の反応を考えさせてみてください。
きっと「泣いてしまう」「逆に怒らせてしまう」などのマイナスな反応を想像することができるでしょう。
そこまで想像させることができたら、今度は「怒っておもちゃを取り貸すのは良いこと?」と聞き、良くないことだと理解させてください。
その後、相手も自分も納得のいく答えを親子で考え、ロールプレイングを通して練習してみましょう。
今回の例では「勝手におもちゃを取られるのは嫌だと相手に伝え、返すように要求する」などの答えが考えられるでしょうか。
このように納得のいく答えを考えてロールプレイングを行えば、同じような場面に出くわしたとき、相手にとっても自分にとっても好ましい行動を取ることができるようになります。
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第3課程:感情的な受容
想定していない場面でもとっさに感情のコントロールを行えるようになるためには、自分はもちろん、他者の価値観や欲求を正しく理解し、受け入れる力を身に付ける必要があります。
そのための手段として有効なものと考えられているのが、自分が「大切にしているもの、ひと、モットーなど」を5つ挙げ、それらについて対話形式のロールプレイを行う「カチッとファイブ」です。
親子でお互いに5つずつ、大切な物事を出し合って「○○を大切に思っているんだね。たしかに、○○は大切だよね」などと認め合えば、自分の感情はもちろん、他者の感情も大切なものだと理解することができるでしょう。
第4課程:新しい行動パターンの習得
自分の感情も相手の感情も大切なものと理解できたら、「自分の感情を発信すること」と「相手の気持ちを受け止めること」、両方の練習をします。
「自分の感情を発信すること」については、「僕はそのおもちゃで遊びたかったから、腹立たしいと感じた」といった具合に「自分の気持ち」と「そうなった理由」をわかりやすく伝えられるように訓練しましょう。
一方、「相手の気持ちを受け止めること」については、うなづきやあいづち、「どうしてそう思ったの?」などの話を促す質問を適当なタイミングでできるように練習してください。
普段の会話の中でもできそうな訓練ですが、慣れないうちは台本を用意して練習を行うと良いでしょう。
第5課程:新しい行動パターンの練習
最後は第1課程から第4課程で学んだことの総まとめです。
日常生活の中で自分の感情を発信したり、他者の感情を理解したり、自分と他者の感情に折り合いをつけたりできるように実践を繰り返します。
第5課程は日常生活のすべてが教材。
日常生活で何か躓きや気づきがあったら、その都度親子で話し合うように心がけてみてください。
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子供のアンガーマネージメントまとめ
小学生のうちから感情をコントロールする力を身に付けることができれば、将来どんな困難な状況に陥ったとしても、きっと乗り越えることができますよ。
今回ご紹介した「子どものアンガーマネージメント」を親子で実践し、どうか二人三脚で時代の荒波を乗り越えていってください。
参考文献
小学校における予防的心理教育としてのアンガーマネージメントDプログラムの理論的枠組み Anger Management D Program Theory for Psychoeducation in Elementary School
本田恵子(早稲田大学教授)大森良平 https://ci.nii.ac.jp/naid/120006812932/
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ニックネーム:ちぃちゃんママ
2児の母。
国立大学教育学部の大学院修了。
教育関連の学術論文を多数読破。
母親目線でわかりやすく学術論文を紹介します。
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