小学生のわが子の計算が遅い。子供が指を使わないと計算できない…
そんなときママは不安な気持ちになってしまいますね。
心配しないで!ママの疑問と不安を解消する研究論文をみつけました。
算数が得意になるにはどうしたらいいのか、工学博士が解説するので試してみてください。
数を数える時どうやって数える?
突然ですが、皆さんは数字を計算するときはどのようにして数えますか?
もしかするとママパパも子供時代、小学校1・2年生のころには指を使って計算をしたことがあるかもしれません。
一方で、なかには指を使って計算するわが子を見ると、幼く感じてしまったり、計算のスピードが遅いこともあり、指を使って計算することをよくないことだと思っていらっしゃる方も多いかもしれません。
秋田大学と広島大学の研究論文によると子供を持つ保護者のうち74%が小学校の2年生くらいまでは指を利用してもよいが、それ以上の年齢になると指を使って欲しくないと考えているというデータもあります。
また、教師に対する調査論文によると、教師の多くは小学校1〜3年生までの間に指を使わないで計算できるようになってほしいと考えているという調査結果が得られています。
このように指を使って計算することはネガティブに捉えられることが多いのが実情のようです。
*指を利用して計算する子どもに対する教師の指導~教師へのインタビューと探索的調査の結果から~https://air.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=876&item_no=1&attribute_id=48&file_no=1
しかしながら、科学的には実は子供が指を使って足し算や引き算をするということには長期的にみると、算数が得意になる効果があるのではないかと言われています。
今回は指を使って計算や作業を行うことの効果についてご紹介します。
指を使うと脳が刺激される
まず、指を使って計算するとなぜ良いのでしょうか?それには脳科学的な理由と、子供の精神的成長という2つの理由が存在します。
脳科学的に良い
まず1つ目の脳科学的な理由を説明します。「指は第二の脳」と呼ばれることがあり、これは指先を動かすことにより脳が活性化されることからこのように呼ばれています。
脳神経外科医のワイルダー・ペンフィールドによると、5本の手指と手のひらが脳の機能に対して占める割合は、感覚野では全体の約1/4、運動野は約1/3となっており、非常に大きな部分を占めています。
そのため、指先を動かして計算することにより脳に刺激をもたらすのではないかと考えられています。
例えば、ピアノは指先を使う作業なので脳に良いと言われることがありますが、同じようなことが指を使って計算することにより起こっていると期待されています。
成功体験により自己肯定感が向上
次に2つ目の精神的成長の観点を説明します。子供が指をつかって数を数えることにより、指を使わない場合よりもうまく計算をすることができるようになります。
結果として間違えずにうまく計算できるようになることで、子供に成功体験を与え、自信が付いたり、自己肯定感が向上するという効果があります。
また、長期的な数学的センスを考える場合でも、問題に応じて自分ができる方法のなかで適切な方法を選ぶ、というのは非常に重要な数学的センスです。
そのため、子供が指を使って数を数えたり、計算したりするのは大人からすると幼い行為のように見えるかも知れませんが、子供にとっては自分ができる方法で間違えずに計算できるというのは非常に数学的に重要な体験になるといえます。
このようにして算数を自分の方法で解けることにより、算数が好きになるというのも長期的にみたときに大切です。ですので、子供が指を使って計算していたとしても、それを否定することなく温かく見守るようにしましょう。
算数が得意になるには他にもどんな方法がある?
今回は、指を使うことで算数が得意になるというお話を紹介しました。
最後に指先を使うことで、算数が得意になるための工夫として他にどのようなものがあるのかを説明します。
指先と算数といえば、最も有名なのがそろばんです。IT全盛期のこの時代に今更そろばんなんて時代遅れじゃないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、そろばんには暗算力や集中力を高める効果があることが知られています。
それだけでなく、そろばんで正確に計算するためには指先を器用に動かす必要があり、脳機能を高めることが期待できます。
そろばん経験者は頭の中でそろばんを弾いて計算できるということを聞いたことがある方もいるかもしれません。
これは、そろばん経験者は右脳が活発に活動しているため、イメージをすることが得意な右脳が発達し、イメージの中でそろばんを動かすことができるからだと考えられています。
他にもピアノも脳を刺激する習い事として有名です。ピアノの演奏では両手の指が全く違う複雑な動きをします。
このように左右両方の指を複雑に動かすことで脳に大きな刺激を与え、発達させることができると考えられています。
ちなみに、片手で弾く場合よりも両手で弾く方が脳に多くの刺激を与えることができるそうです。
指先を使うことが大切であるのは、実は子供に限ったことではありません。
大人になってからでも、指先を使う趣味を持つことにより脳を刺激するのは非常に大切なことです。
指先を動かすことで老人のボケ防止に繋がるとも言われています。
例えば、料理や陶芸、編み物や日曜大工など保護者の方も子供と一緒になって、脳を刺激してみてはいかがでしょうか?
楽しいだけでなく、脳の活性化によって新たな閃きを得ることができるかもしれません。
参考にした研究論文
●指を利用して計算する子どもに対する保護者の指導一保護者への予備的調査の結果から一 山名裕子(秋田大学教育文化学部)杉村伸一郎宰(広島大学大学院教育学研究科) https://core.ac.uk/download/pdf/144186828.pdf
●指を利用して計算する子どもに対する教師の指導一教師へのインタビューと探索的調査の結果からー山名裕子(秋田大学教育文化学部)杉村伸一郎宰(広島大学大学院教育学研究科) https://air.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=876&item_no=1&attribute_id=48&file_no=1
30代大学教員 アメリカ在住
京都大学大学院修了 博士(工学)