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イグノーベル賞。賞金はいくら?どんな研究が受賞しているの?

イグノーベル賞の研究

イグノーベル賞って知っていますか?

2022年千葉工業大学創造工学部デザイン科学科の松崎元(げん)教授らの研究チームが円柱形つまみの回転操作における指の使用状況についての研究で「工業賞」を受賞しました。

昨年、2021年は京都工芸繊維大学の村上久助教(集団行動科学)らの歩きスマホに関する研究が「動力学賞」に選ばれました。日本人は16年連続。

ノーベル賞との違い、みんなが気になる賞金のこと、「イグノーベル賞」について工学博士がわかりやすく解説します。

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イグノーベル賞とは?

イグノーベル賞の賞金は日本円でいくら?

ノーベル賞との違い

おそらくノーベル賞という賞を聞いたことがある方は多いかもしれません。

ちなみにノーベル賞とは科学界での最高の栄誉の一つで、サイエンス分野では医学生理学賞、物理学賞、化学賞の三つが存在します。

ノーベル賞は通常10月の1週目から2週目に発表されることが多いですが、イグノーベル賞はノーベル賞の少し前に発表になるサイエンス分野の賞のひとつです。

イグノーベル賞がノーベル賞と違うのは、単純に科学の世界での最高の栄誉というわけではなく、 イグノーベル賞は「人々を笑わせる、かつ考えさせた業績」を称える科学賞になります。

つまり、イグノーベル賞はノーベル賞のパロディの一種で、科学や経済などの世の中の成果や事象に対して少しニヤッとするような、そして少し考えさせられるようなことに対して与えられる賞になります。

ちなみにイグノーベル賞を英語でいうと、Ig Nobel Prizeと言います。

ここでIgは「逆の」という意味を持ち、英語の形容詞 ignoble「恥ずべき、不名誉な、不誠実な」にかけた造語になっています。

イグノーベル賞は必ずしも科学研究である必要はなく、社会的事件や風変わりな出来事などを起こした10の個人やグループに対して授与されます。

イグノーベル賞の賞金

ちなみに受賞者に対して10兆ジンバブエ・ドルが授与されています。

ジンバブエは当時ハイパーインフレを起こしており、10兆ジンバブエ・ドルは数百円の価値となっています。

2022年の授賞式はオンラインでしたが、例年はハーバード大学のサンダーズシアター開催されます。現地までの交通費や宿泊費などの費用は出ません。受賞した研究者の自腹になります。

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どういう研究が選ばれているの?日本人は16年連続受賞中!

イグノーベル賞ってどんな研究が受賞しているの?

イグノーベル賞はどのような成果に対して賞を与えているのか見てみましょう。

例えば2020年に受賞した研究は合計10個あり、今年一番有名なものは「ヘリウムガスを使うとワニのうなり声も高くなることを発見したことに対して」という研究に対して、京都大学の西村剛教授が音響学賞を受賞しています。

西村教授はワニの発声機構について研究をしていたのですが、ワニにヘリウムガスを吸わせるという少し風変わりな研究をしていることを想像すると少しクスリとする方もいるかもしれません。

実はこの研究は「太鼓のような音を出すヨウスコウワニの発声の仕組みが打楽器ではなく人や鳥類と同じ、声道を通る管楽器の仕組みで行われてることを明らかにした」という超真面目な研究なのですが、見方によってはクスリとするというのがイグノーベル賞のよくあるパターンです。

他にも2020年度では材料工学賞として「ヒトの凍った大便から作ったナイフが機能的ではないことを実証したことに対して」という研究が受賞しています。

イグノーベル賞ではこのような大便などのちょっとした下ネタに関連した研究が受賞することも多いです。もしもこの2つに興味を持った方は自分でイグノーベル賞について調べてみましょう。

きっとニヤッとしたり、クスリとするような研究を見つけることができると思います。

ちなみに賞が創設されて以来、日本人は繰り返し受賞しており、イグノーベル賞常連国となっています。1991年の創設以来、日本人が受賞しなかったのはたった7年だけとなっており、2022年の現在は16年連続で受賞し続けています。

日本人はその気質もあって世界的に見るとマニアックだったり、細かいことをすることが得意であることが多く、その気性がイグノーベル賞受賞につながるのかもしれません。

イグノーベル賞を受賞した日本人と研究まとめ

  • 1992年 医学賞
    「足の匂いの原因となる化学物質の特定」
    神田不二宏、八木栄一郎、福田實、中嶋啓介、太田忠男、中田興亜(以上、資生堂研究員)
    F. Kanda et al., “Elucidation of Chemical Compounds Responsible for Foot Malodour,” British Journal of Dermatology, Vol. 122, No. 6, pp. 771-6 (1990)
  • 1995年 心理学賞
    「ハトを訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させることに成功」
    渡辺茂(慶應義塾大学教授)
    坂本淳子(慶應義塾大学)
    脇田真清(慶應義塾大学)
    S. Watanabe et al., “Pigeons’ Discrimination of Paintings by Monet and Picasso,” Journal of the Experimental Analysis of Behavior,” Vol. 63, pp. 165-174
  • 1996年 生物多様性賞
    「岩手県の岩石からミニ恐竜、ミニ馬、ミニドラゴン、ミニ王女など1000種類以上に及ぶ「ミニ種」の化石を発見」
    岡村長之助(岡村化石研究所)
  • 1997年 生物学賞
    「人がガムを噛んでいるときに、ガムの味によって脳波はどう変わるのか」
    柳生隆視(関西医科大学講師)ら
    T. Yagyu et al., “Chewing gum flavoraffects measures of global complexity of multichannel EEG,” Neuropsychobiology, Vol. 35, pp. 46-50 (1997)
  • 1997年 経済学賞
    「【たまごっち】により、数百万人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせた」
    横井昭裕(ウィズ)真板亜紀(バンダイ)
  • 1999年 化学賞
    「夫のパンツに吹きかけることで浮気を発見できるスプレー【Sチェック】を開発」
    牧野武(セーフティ探偵社)
  • 2002年 平和賞
    「犬語翻訳機「バウリンガル」の開発によってヒトとイヌに平和と調和をもたらした」
    佐藤慶太(タカラ)、鈴木松美(日本音響研究所)、小暮規夫(獣医師)
  • 2003年 化学賞
    「ハトに嫌われた銅像の化学的考察」
    廣瀬幸雄(金沢大学教授)
  • 2004年 平和賞
    「カラオケを発明し、人々が互いに寛容になる新しい手段を提供した」
    井上大佑(会社経営者、大阪府)
  • 2005年 生物学賞
    「においを発するカエルの分泌物の機能と系統発生的意義についての調査」
    早坂洋司(オーストラリアワイン研究所)
    B. P. C. Smith et al., “A Survey of Frog Odorous Secretions, Their Possible Functions and Phylogenetic Significance,” Applied Herpetology, Vol. 2, No. 1-2, pp. 47-82 (2004)
  • 2005年 栄養学賞
    「34年間自分の食事を写真に撮影し食べた物が脳の働きや体調に与える影響を分析」
    中松義郎(ドクター中松)
  • 2007年 化学賞
    「ウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した研究」
    山本麻由(国立国際医療センター研究所研究員)
  • 2008年 認知科学賞
    「単細胞生物の真正粘菌にパズルを解く能力があったことを発見」
    中垣俊之(北海道大学/理化学研究所)、小林亮(広島大学)、石黒章夫(東北大学)、手老篤史(北海道大学/Presto JST)、山田裕康(名古屋大学/理化学研究所)
  • 2009年 生物学賞
    「ジャイアントパンダの排泄物から採取したバクテリアを用いると、台所の生ゴミは質量で90パーセント以上削減できることを示した」
    田口文章(北里大学名誉教授)他
  • 2010年 交通計画賞
    「鉄道網など都市のインフラストラクチャー整備を行う際、真正粘菌を用いて輸送効率に優れた最適なネットワークを設計する研究」
    中垣俊之(公立はこだて未来大学)、小林亮(広島大学)、手老篤史(科学技術振興機構さきがけプロジェクト)、高木清二(北海道大学)、三枝徹(北海道大学)、伊藤賢太郎(北海道大学)、弓木健嗣(広島大学)他
  • 2011年 化学賞
    「火災など緊急時に眠っている人を起こすのに適切な空気中のわさびの濃度発見と、これを利用したわさび警報装置の開発」
    今井真(滋賀医科大学講師)、漆畑直樹(シームス)、種村秀輝(シームス)、田島幸信(香りマーケティング協会理事長)、後藤秀晃(エア・ウォーター防災)、溝口浩一郎(エア・ウォーター防災)、村上純一(琵琶湖病院)、広浜秀次(研究開発担当)
  • 2012年 音響賞
    「自身の話した言葉をほんの少し遅れて聞かせることでその人の発話を妨害する装置【スピーチジャマー(Speech Jammer)】を発明」
    栗原一貴(産業技術総合研究所)、塚田浩二(お茶の水女子大学)
  • 2013年 化学賞
    「たまねぎに多く含まれているアミノ酸を反応させると涙を誘う「催涙物質」が作られ、目を刺激し、涙が自然と出てくる仕組みになっている研究」
    今井真介、柘植信昭、朝武宗明、永留佳明、澤田 博(以上、ハウス食品)、長田敏行 東京大学名誉教授(法政大学教授)、熊谷英彦 京都大学名誉教授(石川県立大学長)
  • 2013年 医学賞
    「心臓移植をしたマウスにオペラの『椿姫』を聴かせた所、モーツァルトなどの音楽を聴かせたマウスよりも、拒絶反応が抑えられ、生存期間が延びたという研究」
    内山雅照(順天堂大学・帝京大学)、平井敏仁(東京女子医科大学)、天野篤(順天堂大学)、場集田寿(順天堂大学)、新見正則(帝京大学)
  • 2014年 物理学賞
    「床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだときの摩擦の大きさを計測した研究」
    馬渕清資(北里大学教授)、田中健誠(北里大学)、内島大地(北里大学)、酒井里奈(北里大学)
  • 2015年 医学賞
    「キスでアレルギー患者のアレルギー反応が減弱することを示した研究」
    木俣肇(開業医)
  • 2016年 知覚賞
    前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると実際より小さく見える「股のぞき効果」を実験で示した研究
    [13] 東山篤規(立命館大学教授)
    足立浩平(大阪大学教授)
  • 2017年 生物学賞
    「雄と雌で生殖器の形状が逆転している昆虫(トリカヘチャタテ)の存在を明らかにした研究」
    吉澤和徳(北海道大学准教授)、上村佳孝(慶應義塾大学教授)
  • 2018年 医学教育賞
    「座位で行う大腸内視鏡検査―自ら試してわかった教訓」
    堀内朗(昭和伊南総合病院消化器病センター長)
  • 2019年 化学賞
    「典型的な5歳の子供が1日に分泌する唾液量の測定」
    渡部茂(明海大学保健医療学部教授)
    大西峰子、今井香、河野英司、五十嵐清治
  • 2020年 音響学賞
    「ヘリウムガスを使うとワニのうなり声も高くなることを発見」
    西村剛(京都大学霊長類研究所准教授)
  • 2021年 動力学賞
    「歩行者同士が時には、衝突することがある理由を明らかにする実験を実施」
    村上久(京都工芸繊維大学助教)、西成活裕(東京大学教授)、西山雄大(長岡技術科学大学講師)
  • 2022年
    「つまみを回すときの効率的な指の使い方」松崎元(千葉工業大学教授)ら

イグノーベル賞を取るためにはどうすればよいか?

日本人の研究者もたくさんイグノーベル賞を受賞している

ノーベル賞ではなく、イグノーベル賞を取るにはどうすればよいのか、ということを考えている人がもしかするといるかもしれません。

最後にイグノーベル賞を狙うにはどうしたらよいかについて考えてみましょう。

イグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディーとはいえ、実は受賞するのは決して簡単ではありません。というのも世界で1年に10組しか受賞者がいないからです。

イグノーベル賞は、研究だけでなく社会的事件や風変わりな出来事も受賞対象に選ばれています。しかし、社会的事件や風変わりな出来事は受賞者はそれほど多くはありません。

そのため、イグノーベル賞を狙うのであれば、まずは研究者を職業に選ぶことが第一歩であると言えるでしょう。そのためには、大学・大学院を修了して博士号を取るのがもっとも近いルートになります。

そして、ポイントは大便や排泄物などのちょっと下ネタを研究テーマや内容に加えるということです。過去のイグノーベル賞を見ると、これらは非常に受賞する傾向が高く、ほぼ毎年受賞しています。

これらを一生の研究にするには抵抗がある方もいるかもしれませんが、数年の間研究をし、イグノーベル賞を狙うというのは人生の出来事において悪い考えではないかもしれません。

イグノーベル賞とはいえ、注目されている研究分野や社会的事件等に贈られる賞であるので、自分の研究が脚光を浴びるのはとても名誉なことだといえます。

↓2021年イグノーベル賞を受賞した京都工芸繊維大学 村上久先生の研究をアニメで解説↓

この記事を書いたのは

大学の先生

30代大学教員
一児の父
京都大学大学院修了
博士(工学)

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