買い物のレジ袋が2020年7月に有料になり1年以上たちました。今年はプラスチックのスプーンやストローの無料提供が見直されたり、木製に変わっていったりしています。
プラスチックは生活のあらゆるところで使われていて非常に便利ですが、なぜ減らさなければならないのでしょうか?
このページでは「海のプラスチックごみ問題」を子供にもわかりやすく地球科学の工学博士が解説します。
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もくじ
海に流れ込んだプラスチックごみの影響
海に行くとレジ袋やペットボトルが浮かんでいるのを見かけます。環境庁が調べたところ、日本の海岸に漂着したごみの65%がプラスチックごみでした。世界中では海に1億5,000万トンプラスチックごみがあり、毎年1,000万トン程度が新たに流れ込んでいます。
*画像:WWFジャパン https://www.wwf.or.jp/campaign/pcc2025/
海にプラスチックごみが流れ出すと、どういう影響があるのでしょうか?
もっとも代表的な影響は、海に住む魚や海鳥、アザラシなどの哺乳類が、エサとまちがえてプラスチックを食べてしまうことです。海の生物が食べたプラスチックは消化されずに胃袋にたまり、本当のエサを食べられなくなって死んでしまいます。
フィリピンでは、海岸に打ち上げられたクジラの胃から、40キログラムものプラスチックが見つかったというニュースがありました。日本でも鎌倉の海に流れついたシロナガスクジラの赤ちゃんの胃から、プラスチックが見つかったことがあります。
プラスチックを食べる以外にも、プラスチック袋や漁業に使う網が体にからまり、死んだり傷つく生物も多数報告されています。
プラスチックの長所が海では問題になる
プラスチックは安く作ることができて、耐久性が高いため、家庭や産業で欠かせないものになっています。しかし、海に流れ込むとその耐久性が問題となるのです。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中嶋亮太氏のチームは「しんかい6500」という有人潜水調査船を使って、千葉・房総半島の沖合、水深6000メートルの海底を調査しました。
その結果、1平方キロメートルあたり4,561個のプラスチックごみがあることがわかりました。驚くことに30年以上前のレトルト食品の袋が、ほとんど劣化しないまま海底に横たわっていました。
プラスチックの種類によっては、分解されるまで数百年以上かかると言われています。海に流れ込んだプラスチックは半永久的に海に残り、海の生態に影響を及ぼしてしまうのです。
*海洋研究開発機構(JAMSTEC)「房総半島沖の水深6,000m付近の海底から大量のプラスチックごみを発見―行方不明プラスチックを探しに深海へ―」(2021.3.30) http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210330/
やっかいなマイクロプラスチック
紫外線や波にさらされて劣化したプラスチックは、小さな粒子になります。5ミリメートル以下になったプラスチックをマイクロプラスチックと呼びます。マイクロプラスチックは有害物質を取り込みやすく、海洋を移動することで海に汚染を広げる可能性があります。
また、マイクロプラスチックを摂取したプランクトンを小魚が食べ、中型の魚が小魚を食べ、大きな魚が中型の魚を食べるという食物連鎖により、マイクロプラスチックや有害物質が多くの生物に取り込まれていきます。
そして、魚を食べる人間にも同じ影響が起こってしまいます。驚くべきことに人間は、平均すると1週間にクレジットカード1枚分ものプラスチックを摂取していると言われています。
マイクロプラスチックの人体や生物への影響はまだ明らかではありません。しかし、自然界に存在しなかったプラスチックが体内に入ることが良いこととは言えないでしょう。
*WWFジャパン「海洋プラスチック問題について」(2018.10.26) https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
プラスチックごみはどこから?なぜ海に?
海のプラスチックごみには、漁業の網などもともと海で使っているプラスチックがそのまま捨てられたものと、陸上で使われていたプラスチックが流れ込んだものがあります。
そして、陸上からのプラスチックが、全体の8割と言われています。
レジ袋、ペットボトル、プラスチック包装などは、手軽に使える分、簡単に捨てられてしまいます。このようにして、使い捨てされたプラスチックは雨や風で川に入り、海に流れ出てしまいます。
プラスチックごみが魚より多くなる!?
世界中のリーダーが集まる世界経済フォーラム(ダボス会議)で、今のペースでプラスチックごみが増えると、2050年には海のプラスチックごみが魚の量を上回るというショッキングな試算が発表されました。
海のプラスチックごみは、一刻も早く対処しなくてはならない問題なのです。
*世界経済フォーラム報告書「新しいプラスチック経済:プラスチックの未来を再考する」(2016) https://jp.weforum.org/reports/the-new-plastics-economy-rethinking-the-future-of-plastics
解決策は3つのR
プラスチックごみを減らす対策は3Rとされています。
陸上のプラスチックを減らすことで、海のプラスチックも減らすことができます。
- Reduce(リデュース):ごみを減らす
- Reuse(リユース):繰り返し使う
- Recycle(リサイクル):資源として再利用する
3Rには会社や工場でできることと、家庭でできることがあります。次のようなわたしたちができることでも、大きな効果があります。
*こども環境省 https://www.env.go.jp/kids/about/page5.html
海のごみ問題、小学生にもできること
- マイバッグ、マイボトル、マイ箸を持ち歩く
- プラスチック包装の少ない商品を買う
- 詰め替え用ボトルなど、繰り返し使えるものを選ぶ
- 道に落ちているプラスチックを見つけたら、ゴミ箱に捨てる
- プラスチックごみは、汚れをとって分別ごみに出す
- 海や川の清掃活動を手伝う
身近でできることは他にもありそうです。自分でできることを見つけて、実行していきましょう。
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あっ君パパ
30代
京都大学大学院修了
博士(工学)
6月8日は世界海洋デー!SDGs Goal14「海の豊かさを守ろう」。海の最先端の研究をしている JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)とハローキティのコラボ動画↓
*JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)小中学生向けコンテンツhttps://www.jamstec.go.jp/j/jamstec_news/jfs/