「うちの子、暗記が苦手みたい…」とお悩みのママは多いのではないでしょうか。
たしかに、暗記は学習の基本。暗記ができなければ、社会などの暗記型教科はもちろんのこと、算数・数学といった理解型教科でもつまずいてしまいます。
できれば、暗記力は小学生のうちからしっかり身につけておきたいものですよね。
そこで、今回は、暗記力を高めるための方策について、丹藤克也先生(愛知淑徳大学 )の研究「音読の何が記憶を促進するのか?―構音運動と音声情報の役割―」(2018年)をもとに紹介します。
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音読・口パク・聞くだけ・黙読…最も暗記に効果があったのは?
2017年、丹藤先生は愛知淑徳大学で山中悠里さんという学生の卒業研究の指導を担当していました。
山中さんは卒業研究として「音読・口パク・聞くだけ・黙読といった4つの方法は、それぞれ、どれほど記憶成績を促進するか」というとても興味深い実験を行ったようですが、丹藤先生は山中さんの卒業研究の成果を埋もれさせてはなるまいと「日本認知心理学会」でその研究成果を発表されたようです。
山中さんが行った実験の概要は以下になります。
【実験参加者】大学生24人
【実験条件・材料】
- 集めた大学生に対し、個別で実験を実施。
- カタカナ表記で3音節の日本語普通名詞の単語を160語選出。そのうちの80語を学習リストとし、音読・口パク・聞くだけ・黙読、それぞれの条件に20語を振り当てた。
- 「音読」条件下では、単語を声に出して読み上げて記憶する。
- 「口パク」条件下では、声に出さず口だけ動かして記憶する。
- 「聞くだけ」条件下では、声に出さず音を聞くだけで記憶する。
- 「黙読」条件下では、声に出さず単語を見るだけで記憶する。
【実験手順】
- 暗記の方法として音読・口パク・聞くだけ・黙読のいずれかをランダムに提示。
- 学習リストの単語を20語、ランダムに視覚提示し、先に示した方法によって記憶するよう求めた。
ただし、「聞くだけ」条件については、単語を視覚提示せず、単語を読み上げた音声を流し、それを聞いて記憶するように求めた。 - それぞれの学習直後、実際に提示された学習リストの80語と実際は提示されていなかった80語をランダムに視覚提示し、それが実際に提示されていたかどうかを判断するテストを実施した。
さて、この実験の結果はどのようなものになったのか、とても気になりますよね。
音読・口パク・聞くだけ・黙読の記憶成績順位は、次のようになったそうです。
- 音読(再認率:78%)
- 口パク(再認率:61%)
- 聞くだけ(再認率:58%)
- 黙読(再認率:約54%)
口パクと聞くだけ、聞くだけと黙読にはそれほど大きな差は見られなかったようですが、音読と口パクとの間には、大きな差が見られたとのこと。
記憶力・暗記力アップに音読が有効であることが証明されたのです。
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国語以外の教科書も音読してみよう
音読といえば、国語の教科書の音読を思い浮かべる人がほとんどでしょう。
しかし、暗記力を伸ばしたいのであれば、国語以外のすべての教科書についても音読することをおすすめします。
理科や社会はもちろん、数式だらけの算数・数学の教科書であっても、しっかりと音読すれば、より多くの物事を記憶できるはずです。
ただ、教科書を1回音読したくらいでは、その記憶も一時的なものにしかなりません。
なぜなら、一度身につけた記憶の多くは短期記憶として処理され、忘れ去られてしまうことが多いからです。
では、どうすればずっと覚えていられる長期記憶にすることができるのか。
答えはいたってシンプルなもの。教科書を繰り返し音読すれば良いのです。
しかし、毎日毎日、膨大な量の音読を繰り返すのは現実的ではありません。
音読をしていくらか記憶できたと思ったら、今度は3日ほど時間を空けてから、その次は4日ほど空けてから…という風に、徐々に期間を伸ばしていくようにして、長期にわたって繰り返し音読するようにみてください。
そうすることで、一生忘れることのない長期記憶に昇華することができるはずです。
また、音読は歴史分野などにおける時系列や社会・理科などにおける因果関係を覚える上でも大いに役立ちます。
なぜなら、音読することにより、単語のみならず、文章の流れも記憶することができるからです。
小学校の教科書には、中学校・高校・大学…と勉強を続けていく上で、絶対に外せない内容が無駄なく詰まっています。
音読によって教科書の内容をすべて長期記憶に昇華できたならば、大きなアドバンテージとなることでしょう。
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「音読で暗記力アップの効果」のまとめ
わが子の暗記力を伸ばしたいと考えるのであれば、すべての教科の教科書を繰り返し音読させると良いでしょう。
音読をすれば、黙読よりもはるかに効率的に、さまざまな物事を記憶することができます。
特に、小学校での学習は、これから学び続けていく上で完璧におさえておきたいものばかり。
小学校の教科書については丸暗記することを目指すくらいの「心意気」で教科書の音読に取り組んでみてください。
きっと、子どもにとって、大きな財産を築けるはずですよ。
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【参考文献】
丹藤克也先生(愛知淑徳大学 心理学部 心理学科 教員) 音読の何が記憶を促進するのか?-構音運動と音声情報の役割 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cogpsy/2018/0/2018_176/_pdf/-char/ja
ニックネーム:ちぃちゃんママ
0歳と3歳の母。
国立大学教育学部の大学院修了。
教育関連の学術論文を多数読破。
母親目線でわかりやすく学術論文を紹介します。
ユウちゃん
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